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コラム「研究員のココロ」

医薬品流通業界の現状と課題

2003年10月20日 太田康尚


 日本の医薬品業界、特に医薬品卸企業は医療制度改革に伴う薬価引き下げなど、大きな環境変化に直面し、各社とも利益の確保が困難な状況が続いており、生存を賭けての業界再編もいよいよ最終局面に突入しようとしている。この厳しい状況から脱却し勝ち残るためには、新しい企業価値を見出すビジネスモデルの確立が必要である。医薬品卸が成長するために必要な主な施策は「スケールメリットの追求」、「新規顧客開拓」、「新たな収益源の確保」の3つに分類される。その施策の現状と今後の課題は次の通りである。

スケールメリットの追求

 提携・合併を実現させることで、地域卸またはメーカー系列卸から脱却し、スケールメリットを活かして、メーカーや顧客に対して価格交渉力を持つ、業務の効率化をはかる、という施策が主流となっている。業界の再編はかなり進んだが、今後も再編は続くであろう。
 一方で、特定の地域においてシェアナンバーワン卸としてのポジションを維持・向上させるという選択肢は否定されるものではない。業界構造などの環境は多少違うものの、同様の再編が進んだ米国においては広域卸が強い一方で、地域に特化して生き残っている卸が事実存在する。このように、限定された地域でシェアを伸ばすという施策もスケールメリットの追求と言えるであろう。
さらに、医薬品は勿論のこと医療機器等を含めた商品のフルラインアップ化や医薬品の輸出入強化などに見られる国際化も進められている。

 企業統合などにより規模を拡大し続ける広域卸は、通常統合した企業を傘下に入れたグループ企業として存在するものの、グループ経営の観点からみて十分整備された段階に至ってはおらず、グループ経営管理の仕組みを構築することが喫緊の課題となっている。また、物流などの機能は優先的に合理化が進められてはいるが、グループ企業内の間接業務統合などによる効率化は遅れており、今後はそのコスト削減効果を取り込んだ企業体質の一層の強化も期待されよう。
また、地域密着型モデルを目指す企業にとっても、急速に拡大進化する広域卸に対抗するためには、やはり企業体質の強化が必須である。規模は小さいながらも、広域卸に対抗するためには、明確な企業戦略とともに、客観的かつ効率的な経営管理の仕組みの確立が要求されているが、その構築に当たっての時間的猶予はあまり残されてはいない。

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新規顧客開拓

 既存の事業で成長するために必要な顧客維持・獲得のために、卸が早急に取組むべきことの一つは、調剤薬局への対応である。医療機関への対応は従来どおり重要であるが、医薬分業により処方箋の受取率が51.1%(日本薬剤師会調査:平成15年2月全保険,全国対象)と、既に過半数を超えている。また、調剤薬局への新規参入や既存調剤薬局大型化により、調剤薬局自体が大きな力を持ちつつある。この状況が進めば、卸を中抜きしたメーカーと小売との直取引が拡大する可能性もある。それを避けるためには、卸の付加価値をさらに高める必要がある。現状の卸の調剤薬局に対する支援サービスは、情報提供、経営指導、経営支援システムの提供や斡旋、分割販売、M&Aの斡旋などである。変化し続ける調剤薬局向けのビジネスモデルはまだ発展途上にあると言える。

 この既存事業における顧客の維持と獲得において、顧客ニーズの変化に対応した様々なサービスの提供が重要である。その中で、今特に取組むべき優先課題の一つは、卸の2大機能の一つである営業機能の改革である。医薬品卸の営業(MS)には、高度化する顧客ニーズに対応できる能力が不可欠となる。つまり、商品紹介や配送などを中心とした活動から、より質の高い提案型(コンサルティング型)の営業スタイルへの転換が緊急の課題なのである。また、顕在化している問題を解決するための一時的な営業改革ではなく、環境(顧客)変化に対して継続的に適応するための営業改革を行うことが重要である。常に競争力を維持するために、自発的・継続的に進化する仕組み作りが重要なのである。

営業力を強化するための営業革新支援サービス

新たな収益源の確保

 医薬品流通業界には、厳しい競争が繰り広げられているが、一方でビジネスチャンスも存在する。日米欧で既に存在する主なサービスには、医療機関の物品管理業務(在庫管理・発注など)をアウトソーシングするSPD(Supply Processing & Distribution)サービス、MRなどの人材派遣や医薬品知識のある人材の紹介サービス、医薬品情報や医薬品業界のコミュニケーションの場を提供するサービスなどがある。加えて、最近では医薬品の副作用・感染症報告制度の一環として設けられた市販直後調査などをメーカーに代わり卸がその役割を果たすなどの調査代行サービスも行われている。

 これらを含む比較的新しいビジネスは、発展途上の段階であり、確立しているとは言えないものも多く、ビジネスチャンスは十分にある。しかしながら、利益の確保でさえ難しい多くの企業には、新規ビジネスの投資をする余力が無いという実情がある。この場合は、他社との提携など、投資を抑制するいくつかの選択肢がある。各社様々な制約があろうが、将来の新しい企業像を見出し、その姿を実現するための施策を早急に実行することが必要である。


 医薬品流通業界の中で如何に自社の企業価値を再定義するか、卸にとってここ数年内に市場に支持される新しいビジネスモデル、更なる付加価値を見出すことができるかどうかが、将来の業界でのポジションを決めることになるであろう。
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