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実社会に組み込まれる無人自動走行移動サービスの条件

2017年01月24日 武藤一浩


 国が取り組みを加速し始めた限定地域での無人自動走行移動サービスに、技術面や規制面から注目が集っています。その一方で、実社会のどのような場面で適用されることが妥当であるかの検討は、やや不十分なのが実情ではないでしょうか。そこで、われわれは世の中で実際に役立つ無人走行移動サービスの創出を地域交通事業者と共に推進しています。

限定地域での無人自動走行移動サービスとは
 国が「官民ITS 構想・ロードマップ2016」(注1) で提示したように『限定地域での無人自動走行移動サービス』の実現に向けた取り組みが加速しています。これは、制限された区域(限定地域)内において、地域公共交通に近いイメージのサービスを行おうとするものです。基本的には、限定地域内から地域公共交通の拠点までをつなぐ移動手段という想定ですが、自宅玄関前からの乗降の可能性も検討されています。
 すでに大学や企業による公道での自動走行技術実証も進められており、この流れでいけば、政府のロードマップのとおり、2020 年度にはサービスが普及するのも夢でないかもしれません。ただ、ここで、無人自動走行移動サービスの早期導入が求められる『限定地域』とはどのような地域なのでしょうか。

実需があり事業継続性が期待できる限定地域こそが当初の導入先
 無人自動走行移動サービスの導入には、安全の確保をはじめとしたさまざまな面からの検討が欠かせません。実際、技術面を見ると、イレギュラーな状況への対応にまだ不安が残るため、歩行者や自転車、一般車両の往来が激しい地域への導入は時期尚早といえます。規制面では、重大事故を避けるため、20km/h 以下での走行しか認められておらず、国際基準においては自動ハンドル操作は10km/h 以下の走行の場合のみに限定されています。また、事業継続面を考えれば、利用者が見込めない過疎地での導入は厳しく、ある程度の人口密集地を選択せざるを得なくなります。
 当社は、2013 年から、無人自動走行サービスの導入が切実に求められる地域を図のように整理して、絞り込みを行ってきました。

図オールドニュータウン


 袋小路は一般車両往来が少なく、さらに丘陵地となると歩行者や自転車の移動も少なくなる特徴があり有望です。低速運行をサービスとして成立させるには、近距離移動でも車両に乗車して移動したいというニーズが強い、高齢者が多い地域を対象とすることが妥当でしょう。人口密集地については、単純ですが住宅地が候補となるでしょう。住宅地周辺は「生活道路」(注2)となるため一般車両も30km/h 以下の低速走行規制があてはめられるという地域特性もあります。
 これらの検討を進めることで、サービス導入を最も必要とする地域は『40~50年前に全国的に展開された住宅地であるオールドニュータウン』と結論付けられました。なお、このようなニュータウンは、われわれの推計では、全国に2,000カ所程度存在すると考えられます。

地域交通事業者も導入を望む「限定地域での無人自動走行移動サービス」
 多くのオールドニュータウンは公共交通がやや不便な郊外に位置しています。また、住民の新陳代謝があまり進んでおらず、住民の高齢化が進んでいるところが多いのも特徴です。生活の足をマイカーに頼らなくてはならないため、高齢で運転に自信がなくとも免許を返納できず、結果として起こしてしまう不幸な運転事故も少なくありません。
 これら高齢化地域における生活の足に関する切実なニーズに、早くから着目していた感度の高い地域交通事業者も存在はしていました。しかし、一定のニーズが感じられても、既存の公共交通手段では採算に乗りにくく対応できないとの判断を下す事業者がほとんどでした。そのような中、関西のある地域の交通事業者達が、自ら自動走行研究会を立ち上げました。この自動走行研究会では、バス会社(1 社)、タクシー会社(2 社)、レンタカー会社(2 社)と同一地域内において異なる業を営む交通事業者が、地域の移動課題に対応した自動走行サービス実現という同じ目標に向けて共に取り組み始めたのです。今後、この自動走行研究会の活動についての情報を発信していきますので、注目いただければ幸いです。

(注1)「官民ITS 構想・ロードマップ2016」:
    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20160520/2016_roadmap.pdf
(注2)「生活道路」:警察庁では、平成21 年に最高速度規制に係る交通規制基準の見直しを行い、生活道路については「歩行者・車両の通行実態や交通事故の発生状況を勘案しつつ、住民、地方公共団体、道路管理者などの意見を十分に踏まえて、速度を抑えるべき道路を選定し、このような道路の最高速度は原則として30km/hとする」ことを定めた。

※武藤一浩「GPUが可能にする自律運転」(LIGARE/自動車新聞社出版) vol.30(2016年11月) P.38-39 を一部改変して転載


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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