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CSRを巡る動き:従業員の健康管理の推進

2017年03月01日 ESGリサーチセンター


 2016年10月、厚生労働省「平成28年過労死等防止対策白書」(以下、「白書」)が公開されました。「過労死等防止対策推進法」(平成26年11月施行)に基づき、日本の過労死の実態等についてとりまとめを行った初めての白書です。

 「白書」によれば、労働者(パートタイム労働者を含む)全体の1人当たりの年間総実労働時間は、年々減少をしています。これは、パートタイム労働者の割合が、近年、増加傾向にあることが理由であり、一般労働者(常用労働者のうち、パートタイム労働者以外の労働者)の総実労働時間は2,000時間前後で高止まりしているのが現状です。性別では、特に30 歳代、40 歳代の男性で週60 時間以上就業している者の割合が高くなっています。有給休暇の取得率は、平成12 年以降5割を下回る水準で推移しており、平成27年度も47.6%と5割弱です。
 さらに、勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数は、2,159 人(平成27年)で、自殺の理由として、「仕事疲れ」が最も多く3割を占めていることが明らかとなっています。
 過労死等を防止するために、従業員の総労働時間を減らし、健康管理を推進することは、企業が取り組むべき課題の1つでしょう。従業員の健康管理に取り組むことは、企業自らにとってもメリットを生むことでもあるのです。本稿では2つの視点で整理をしてみましょう。

 1つ目は、製品・サービスのリスク対策となるメリットです。「白書」によれば、自殺にまでは至らなくても、業務における強い心理的負荷を原因に精神障害を発病したとする労災請求件数は、増加傾向にあり、支給決定(認定)件数は、平成22 年度に300 件を超え、平成24 年度以降は400 件台で推移しています。メンタルヘルスを崩して、長期休暇を取得する従業員が発生することは、企業にとっても生産性の低下につながります。加えて、従業員が疲労した状態で働き続けていれば、現場でミスを起こす原因となり、重大な事故等に繋がる可能性も否定できません。従業員の健康管理に取り組むことは、大事故等の発生を抑制し、生産性を低下させないためにも必要不可欠だといえます。

 2つ目は、新たな機会の獲得というメリットです。従業員の健康管理のためには、働き方を改革し、総労働時間の削減に向けた取り組みを行なうことが不可欠です。具体的には、時間と場所に柔軟性を持たせた働き方の実現や、有給休暇取得向上に向けた工夫などが施策として挙げられます。働きやすい職場環境が実現すれば、企業イメージを向上させ、新卒採用等で優秀な人材を獲得する機会にもつながります。なかには、女性や高齢者等、多様な人材の活躍が可能となり、人手不足の解消につなげられる企業も出てくると考えます。

 2017年1月には、企業の残業時間を月60時間に制限する上限規制に沿って議論が行われ、政府は、年内に労働基準法の改正案を国会に提出する見通しであることが報道されています。企業が総労働時間の削減に向けた取り組みを行うことは、社会からの要請にもいち早く対応することにつながるのではないでしょうか。
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