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【次世代農業】
農業ビジネスを成功に導く10のヒント~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~
第10回 ヒント(9)若手農業生産者から学ぶIoT、ロボット技術の実現可能性(後編)

2017年03月14日 清水久美子


 第9回メールマガジンでは、本格的な機械化がこれからである果樹栽培に焦点を当て、現在直面している課題や新しい技術への率直なご意見を紹介しました。今回は、北海道岩見沢市で米、麦、大豆、かぼちゃ、ニンジンの生産をされている濱本様のお話に焦点を当てたいと思います。

 北海道は1経営体あたりの耕地面積が広いことが特徴です(平成28年北海道平均:27.13ha、都府県平均:1.99ha)(注1)。スケールメリットが出せるため、機械化による効果を享受しやすく、最新技術の導入もいち早く進んでいます。濱本様も運転アシスト付トラクターを所有され、身体的な負荷の軽減と、直進作業等の精度の向上を実感されています。ドローンによるモニタリングに関しても、生育状況だけでなく、現在目視で行っている生育ステージの確認(推測)まで可能な技術を導入すれば、身体的な負荷の軽減だけでなく、品質や栽培技術の向上が期待できるというご発言がありました。

 一方、地域の勉強会では、次のような検証結果も出ているそうです。(1)農業人口の減少に伴い1経営体あたりの面積が増大した結果、負債が増加している、(2)機材への投資が過剰気味である、(3)政府管掌作物への依存度が高く、補償割合が低下すると利益率が悪化する。

 事業継続性を高める取り組み一つとして、濱本様は地域内で高収益作物を作る仕組みづくりを研究されています。高収益作物を生産するには労働時間を増やす必要があります。しかし、一時的な労働時間のピークに合わせて雇用をしてしまうと、作業が発生しない時期に労働力を活かしきれません。現在は、米・麦・大豆等を主とし、空いた時間に高収益作物を作っている農家が多いため、出荷時期が重なり、狙いとした高価格が実現できないでいるようです。作業平準化、品質向上にはIoTやロボット技術が有用ですが、事業継続性を高めるためには労働力の流動化と投資効率を上げていく仕組みも必要です。濱本様からは、次のようなご提案がありました。(1)農家同士が協力し作業分担をする、もしくは合併し法人経営体となりコントラクター事業を行う、(2)個々で投資していた機材の共同購入を行う、(3)これによって生まれた労働面、資金面の余力で、十分な人材を雇用する。

 今回パネリストとしてご登壇いただいた米澤様、濱本様は生産されている作物も、地域も全く異なります。しかし、お二方のお話からIoT、ロボット技術に対して共通のニーズが見えてきました。例えば、作業代行サービス、作業分担、機材の共同購入というキーワードが出てきました。このキーワードからは、専門オペレーターによる操作、地域にN台という普及のあり方が考えられます。1経営体に1台、ユーザーレベルの混在を前提とする場合と、必要な機能や負担できるコストが大きく異なるはずです。技術開発者が農業生産者と取るべきコミュニケーションの内容も変わるでしょう。農業におけるIoTやロボット技術の本格普及はこれからです。技術を研究だけに留めず、現場に役立つ製品にするためには、発展の仕組みを今から考えることが必要なのです。

(注1) : 農地に関する統計http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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