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未来を語り共有することが未来を創りだす

2017年04月14日 籾山典崇


多くの企業が「不透明」さを感じ、将来見通しに苦慮
 「将来環境見通しの不透明さが増す」と言う表現を目にすることが増えた。例えば、東証一部上場企業の2016年度第3四半期報告書(*1)において、「不透明」という単語は、約2,000社ある東証一部上場企業のうち、約1,100社で用いられている。およそ過半数の企業が「不透明」感を表明していることになる。
 日本総研への依頼でも、「将来について確かな見通しを立てたい」といったものが増えている。企業側の課題認識として、「ありふれた将来像しか発想できない」「トップダウンばかりで組織的に未来を構想する力が弱い」という言葉が聞かれる。

苦慮するのは「未来を語る」機会が不足しているため
 企業がそうした課題に直面するはなぜだろうか?様々な要因が考えられる中で筆者は、組織内において、未来を語り他者と共有する機会が不足していることが一因だと考える。
 社会環境がより速く複雑に変化する中では、より多くの人員が未来を語り共有しながら、互いに未来思考を高めていくことが大切だ。そうすることで、より多くの変化の兆しを察知することが可能になり、それだけ多様な未来像を描くことが可能となるはずだ。それを組織の一部の人間に頼っているだけでは、発想も構想力にも限界が生じる。
 そうした機会を提供する一つの手段として、日本総研では「未来洞察」という手法を用いている。同手法の内容は後述するとして、未来を語り共有することの重要性を示そう。

語り共有された言葉によって未来が創られる
 経営学者のドラッガーは、「未来は知りえない」としつつ、その対処法の1つとして、「自ら未来を創る」ことを挙げた。その「未来を創る」ために何をすべきかのヒントとして、「社会構成主義」という考え方を参考にしたい。
 私たちは通常、言葉というものが客観的な「事実」を正確に写し取ったものと考えている。しかし「社会構成主義」では、言葉が表すものは、人々が互いにやり取りする中で、最も事実らしいと合意されたものにすぎず、事実とは別物であると考える。さらに、互いの関係性で言葉が意味するものが変わるということは、言葉をどう用いるかによって、私たちの行動も変わることを示唆する。
 例えば、「将来予測を立てる」という表現を用いた際に、ある組織では「前年度の数値目標を引き伸ばすこと」でよしとされる一方で、別の組織では「新事業の構想」が要求されることがあり得る。ここから、未来をどう語り共有していくかが、自分たちの未来を創っていくという考えに至るのである。

「未来洞察」がもたらす未来の語りと共有
 その未来を語り共有することが、「未来洞察」の現場では起きている。例えば、そのステップの1つである「社会変化仮説の作成」は、次のように進めていく:

①日本総研側が様々な情報源から抽出した「未来の兆し情報」(スキャニング・マテリアル)から、クライアント側参加者が興味ひかれたものを選び、そこから感じ取った未来を記述する(言語化する)
②各自が言語化した未来を共有する
③共有された内容を元に参加者間で議論を深め、より詳細な未来像を作成する

 この過程では、「未来の兆し情報」によって各メンバーの未来への着想を引き出した上で、それを言語化して、他人と共有することを支援している。そうすることで、各自が互いの見解に刺激を受けてさらに着想を広げたり、議論を通じた深堀したりしながら、参加者間で未来についての共通言語を持つようにする。こうすることで、各自がより未来について考え、構想する力を高めることにつながると、筆者は感じている。
 そうした力を高めることは、不透明さが増す社会環境において、企業にとってより重要な事項となるであろう。先に述べたように、一部の人間に頼るだけでは限界があるし、組織の中に未来を語り共有する機会が不足していることが、企業が将来見通しを立てられない一つの要因と述べたとおりである。不透明さを感じているのであれば、外の世界に目を向けるだけでなく、自分たちの組織の中において、どれだけ未来の語りと共有を起こせているかにも目を向けるできであろう。

(*1):検索対象は、「事業の概況」部分。2017年4月14日時点、日本総研調べ。

※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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