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イノベーション人材育成の最前線

2017年04月28日 粟田恵吾


産学連携によるイノベーション人材育成・EDGEプログラムとは?
 文部科学省によるEDGEプログラムをご存知だろうか?これは、平成26年度~28年度において行われたグローバルアントレプレナー育成促進事業であり、平成29年度からはEDGE-NEXT(次世代アントレプレナー育成事業)として発展継承されている。この3月にはEDGEプログラムの締めくくりとしてEDGE第6回シンポジウムが開かれ、そのパネルディスカッションのパネラーとして参加させていただいたので、パネルディスカッションの概要と感想をレポートする。
(※EDGEプログラムそのものの概要については文部科学省ホームページを参照。)

 パネルディスカッションの論点は以下の3点である。本稿では論点①に絞って「企業において育成されるべきイノベーション人材」に読み替えてポイントを紹介する。
・論点①:育成されるべき人材像とその理由
・論点②:現行のEDGEプログラムの評価
・論点③:具体的プログラムの将来像

 論点①「育成されるべき人材像とその理由」において、予め提示された仮説は以下の3タイプの人材像であるが、これを見ると産業界における新たな人材像(一時期のグローバル人材に加え、昨今イノベーション人材やデザイン人材の育成が叫ばれているのはご案内のとおり)と同様の傾向であることがうかがえる。
 1.将来像を描き、そこから現状の課題を深堀りできるような人材
 2.課題を解決するために、異なる技術、人材をうまく組み合わせて新たな価値を生み出せる人材
 3.技術等のシーズをビジネス価値に変換できるような人材

 また、パネルディスカッションに先立つ基調講演において、文部科学省産業連携・地域支援課長より「大学は教育・研究に加え、社会への貢献が求められている」、イリノイ大学デビッド・ゴールドバーグ名誉教授より「大学は専門知のアッセンブリーからJoyful, Trust, Courage, Openness, Connect のアッセンブリーへ変革しつつある」とメッセージされたことは、大学という社会的存在自体の変革が求められている証左と言える。

企業が求めるイノベーション人材像
 パネルディスカッションにおける各パネラー(産業界4名、大学1名)の意見は、「1.将来像を描き、そこから現状の課題を深堀りできるような人材」を優先すべきという意見で一致していた。主たる理由は、「2.課題を解決するために、異なる技術、人材をうまく組み合わせて新たな価値を生み出せる人材」「3.技術等のシーズをビジネス価値に変換できるような人材」の育成については、企業では過去からすでに取り組まれており、さらに一歩進める必要があるとの認識であった。
 そのためには、大学・企業を問わず「知識・方法論の伝授(個人知)ではなく、組織的な実践・実現支援(組織知)への取り組みへ」と育成のステージを進める必要があるという意見が出された。この意見からは、これまで日本(大学・企業・自治体)がイノベーションを特殊な人材だけが行う特殊な業務として位置づけていたことに対して、日常的・恒常的にイノベーションを興すような風土・文化やエコシステムが必要である、との認識にシフトしつつあることがうかがえる。
 また、人材像としては「市場や社会の変革に対する独自の価値観(自説)や視点(違和感)を持つ」、さらには「(役割付与との関係もあるが)変革への強い熱意を持つ」ことが必要、などの意見が補足された。これらの意見からは、現在のイノベーション人材育成方法が「異業種によるデザインワークショップでアイデアを出す」ことに留まりがちであることへの批判的態度も読み取れる。

そもそもイノベーション人材育成に何を求めているのか
 以上のことから、そもそもイノベーション人材育成に企業が何を期待しているのかが見えてくる。
すなわち、実践的人材育成において強化すべきイノベーション・プロセスは「問題解決のアイデア出し」以上に、「解決すべき課題・テーマの設定」や「アイデアの実現」にシフトしてきている、ということである。
 さらには、イノベーションを新規事業開発という特殊業務の遂行に留めずに、「人間は本来創造的である」「未来は自分たちで創ることができる」との前提に立ち、その可能性を企業の既存の活動(既存事業強化、中期経営計画策定、経営会議や各種制度の見直しなど)にフィードバックする取り組みへと波及させていくことである。
 大企業とベンチャーとのマッチングを中心としたオープンイノベーションなど、さまざまなプログラムの選択肢が増えたことは歓迎すべきであるが、自社が長期的に何を目指しているのか(長期ビジョン)、何を求めているのか(長期戦略)、何が不足しているのか、がわからずに、人材育成のカタチだけ真似る非効率だけは避けたいものである。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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