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CSRを巡る動き:Fintechを利用した持続可能な開発に向けた取り組み

2017年05月01日 ESGリサーチセンター


 2016年12月、UNEP(国連環境計画)によって、Fintechを活用した「持続可能な開発」への貢献に関する報告書が発行されました。本報告では、FT4SD(Fintech for sustainable developmentの略)をキーワードに金融技術革新と持続可能な開発との関連性が紹介され、Fintechを持続可能性に貢献するビジネスモデルに繋げるための期待が示されました。Fintechの活用によって得られる「競争市場の拡大」、「効率化、高速化、自動化の推進によるコストダウン」、「経済システムの脱集中化とアクセス拡大」といった効果は、持続可能開発において重要となる「国家を超えた連携」、「包括的繁栄」等のテーマと相似性を有し、Fintechと持続可能な開発の両者は、IoT、ブロックチェーン、AIといった核となるIT技術によって相互に推進されるという考え方が提唱されています。この考え方をベースにしたビジネスモデルは国連SDGs(持続可能な開発目標)の達成につながるとされ、具体例として、モバイル端末による決済システムを使用して太陽光発電システムの安定供給を実現させたアフリカの民間企業の事例や、ブロックチェーンをベースにしたビットコイン技術で生物多様性保全に向けた資金調達をおこなう仕組みづくりの事例が紹介されています。

 本報告書で特徴的なのは、Fintechが持続可能な開発にもたらすポジティブなインパクトと同時に、その活用が与信管理や適切な規制の及ばない領域で行われるといったFintechの普及に伴うリスクについても語られている点です。新興技術がその使途を拡大する際に図らずも社会システムに悪影響を及ぼしてしまうケースは過去に何度も発生してきました。新技術をただ推進するのではなく、併発しうるリスクに留意しつつ、活用の方向性を示していくことには非常に大きな意義があると考えます。

 こういった議論の流れを受け、2017年1月19日にUNEPと世界有数のFintech企業である中国のAntFinancial社によって「Green Digital Finance Alliance」が立ち上げられました。本同盟はFintechを基軸にしてグローバルな金融システムと持続可能な開発をポジティブに結びつけるために、(1)世界各地で多様な主体によって実施されているグリーンファイナンスの取組情報の集約、評価、モニタリング、(2)主要関係者の連携強化、(3)具体的な技術革新の推進、の3点を達成目標として活動を始めています。これらの活動はまだ始まったばかりですが、同盟の設立者であるAntFinancialは、個人のカーボンフットプリントの削減量に応じた植樹をする等のユニークなサービスを提供し、Fintechが地球環境の持続性に貢献できるという実績を示しており、今後の発展も期待できます。また、同盟のサポーターとしてはIFC(国際金融公社)や前述の報告書でも紹介されたアフリカの民間企業の名前が挙がっており、活動が中国に閉じたものではなく、グローバルに拡大する可能性があることをうかがわせます。

 世界では国連と中国の民間企業が主導しようとしているFintechと持続可能な開発に向けた取り組みの流れに、日本企業はどのように関わっていくのでしょうか。ここでひとつのイベントを紹介したいと思います。2017年3月17日、日本のスタートアップ企業が社会問題解決に向けたイベント「The UK-Japan Fintech Initiative Event」をロンドンにて開催しました。同イベントでは、英国や日本の政府機関、世界有数の監査機関や日本の著名な金融機関、IT関係の事業体が参加する中、同社の、モバイル端末をベースにした給与管理システムがいかにSDGsの達成に向けて貢献できるかが紹介され、Fintechが貧困と格差の是正にむけてできることの可能性が議論されました。H2VentureとKPMGが選定する世界のFintechイノベーション企業100社に日本で初めて選ばれたという同社の社会的プレゼンスと、本イベントに関心を持った参加主体の多様性を見ると、Fintechと持続可能な開発の融合というテーマが他の日本企業に波及していく可能性は十分ありうるのではと考えます。

 Fintech市場がグローバルに発展を続ける中で、この技術を核として持続可能な開発に取り組んでいこうとする動きが世界でどのように牽引されていくか、日本企業はどう関わっていくか、今後の動向は注目に値します。
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