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CSRを巡る動き:米国の気候変動政策と企業によるイニシアティブ

2017年06月01日 ESGリサーチセンター


 米国で2017年1月20日にトランプ大統領が就任して以来、4月29日までの最初の100日間が経過しました。新政権の気候変動政策はどこまではっきりしてきたでしょうか。ホワイトハウスのウェブサイトは、100日の功績を「アメリカの繁栄」「アメリカの安全と海外での安全強化」「政府の説明責任」の3本柱から説明しています。このうち「アメリカの繁栄」の1事例として、石油を輸送するダコタアクセスパイプラインとキーストーンXLパイプラインの建設を進める大統領覚書に署名したことが強調されています。気候変動関連ではこのほか、3月28日に「エネルギーの自立と経済成長のための大統領令」を発し、石油、天然ガス、石炭、原子力を中心としたエネルギー政策の推進を明示しました。同令では、オバマ前政権下での気候変動への適応に関する大統領令や、電力セクターのカーボン排出基準に関する覚書などの即時取消、クライメートアクションプランに関する2つの大統領府報告書の取消を確認しています。

 他方で、米国を中心に、民間企業による気候変動対策に向けた活動やそのPRは依然として、ますます活発になっています。様々なイニシアティブが存在しますが、そのひとつである、低炭素社会への移行を目指す企業と投資家の連合体「WE MEAN BUSINESS」には、2017年5月1日時点で558企業(総売上高8.1兆ドル以上)と183投資家(総資産残高20.7兆ドル以上)が参画しています。企業が参画と同時に提出する誓約の数は1,200を超えました。例えば「再生可能ネルギー100%使用」する誓約には、アップル、ブルームバーグ、バンクオブアメリカ、コカコーラ、ゼネラルモーターズ、グーグル、ゴールドマンサックス、マイクロソフト、ナイキなど89の企業が参画しています。こうした大企業の行動が、サプライチェーンを通じて日本企業にも波及していることも知られています。「WE MEAN BUSINESS」では、「科学的な知見に基づく排出削減目標の採用」「エネルギー生産性の倍増」「再生可能エネルギー100%利用」などのイニシアティブに4,500社が参画して行動すれば、年間100億トン規模の削減可能性があり、2℃目標の達成に近づくとしています。

 また、トランプ大統領の政策により最も「守られている」とみられる石炭産業ですが、考え方は一枚岩ではないようです。同大統領はパリ協定からの離脱を謳ってきましたが、足元の石炭企業からも、パリ協定の枠組みに留まっていた方が、技術支援等の面から有益であるという意見も出ていると報じられています。米国のエネルギー需給の長期的な流れを見れば、一次エネルギー消費量が2010年から減少に転じています。供給側は、天然ガスと再生可能エネルギーがシェアを伸ばし石炭が減るという構造は覆しがたいトレンドであり、それに抗うよりも規模縮小のなかで利益を取っていきたい、と考える石炭企業がいてもおかしくありません。

 トランプ大統領は選挙期間中には、パリ協定からの離脱を表明していました。しかし最近では、こうした企業の動きなどを踏まえて、条件を付けて留まるのではないかという見方も出ています。トランプ大統領が本当にパリ協定離脱に踏み切るのか、あるいは留まる方が得策と考えるのかという決定の行方と同時に、その決定に対し企業がどのような行動に出るのか、双方に注目しておく必要があるでしょう。
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