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CSRを巡る動き:環境配慮に舵を切る中国、日本企業にも商機

2017年07月03日 ESGリサーチセンター


 6月1日、米国のトランプ大統領は、選挙中の公約どおり気候変動防止のためのパリ協定から離脱することを発表しました。米国一国の離脱表明によってパリ協定が、即座に無効になるものではありませんが、その実効性が不透明になる側面は避けられないでしょう。特に、発展途上国の必要資金をどう捻出するかという面で、米国の離脱表明は他の先進国にとって頭痛の種になるでしょう。

 その一方で、中国が、今回、即座に「地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定は、容易に合意に達したものではなく国際社会の幅広いコンセンサスを示したものだ」とし、「順守する」と宣言したことは印象的でした。そこには、米国のパリ協定離脱が、中国にとって、グローバルリーダーとしてのイメージを高める格好の機会になるとの思惑が見え隠れしているようにも見えます。

 こうした戦略的意思決定は、トランプ政権発足の後からしたたかに準備されてきた側面もありました。例えば、2017年4月15日、北京で2017年中国金融学会緑色金融専業委員会年次総会および中国緑色金融サミットという会議が開催されています。中国金融学会緑色金融専業委員会は、2015年4月に中国の中央銀行である中国人民銀行の旗振りのもとに設立された組織です。「緑色金融」という用語は、環境問題解決を促進させる金融という意味で使われています。深刻な環境問題を発生させている企業には融資を行わない、反対に、再生可能エネルギープロジェクトなどには積極的に融資を行うといったことがその一例です。

 政府の呼びかけに応えて、多くの金融機関が、いま中国では緑色金融の実践を進めようとしています。典型的な実績は、環境問題解決を目指す取り組みに調達資金を充当するグリーンボンドといわれる債券の発行でしょう。2016年までに中国でのグリーンボンドの発行額は2,380億人民元となりました。これは、世界の発行額の39%を占め、中国は世界最大のグリーンボンド発行市場なのです。ただ、海外の投資家にとって、中国の「グリーン」の基準と国際的な基準が異なることが、中国のグリーンボンド市場に参入する際の障壁のひとつだといわれてきました。そこで、今回の金融専業委員会年次総会では、本年中に欧州投資銀行と共同で、中国と欧州のグリーンボンド基準を一致させるための研究事業を開始することが発表されています。具体的には、中国のグリーンボンドガイドラインと国際的なグリーンボンド原則(GBP)や気候債券イニシアティブ(CBI)などを比較し、中国と欧州間で共通して使えるグリーンボンド基準の設定を模索していこうという動きです。

 また、中国緑色金融サミットで興味深かったのは、「一帯一路」構想における緑色投資の推進が強く打ち出されたことでした。中国が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」では、アジアと欧州を結ぶ国際インフラの建設が中心に据えられています。その実現には、膨大な資金調達が必要になりますが、プロジェクトと環境配慮を強力に結び付けるとともに、資金調達をグリーンボンドを通じていっていこうという考え方が強調されたのでした。フォーラムで人民大学重陽金融研究院から発表された、『緑色金融と「一帯一路」』と題する報告書では、「一帯一路」への投融資において、「グリーン」の基準を設定し、情報公開を進めていくとしています。同報告書は、「一帯一路」の沿線国の多くは、砂漠化や水不足などの深刻な環境問題に直面しており、緑色金融を通じて、省エネ、温暖化ガスの排出量削減、クリーン・エネルギーの開発、節水型農業の発展、多国間による河川の共同利用、生物多様性の保護、海洋生態の観測、異常気象の予測などを推進していくことの意義は大きいと指摘しています。

 中国国外では、こうした論調は、単なるキャッチフレーズだけに終わるとする冷めた見方がないわけではありません。しかし、中国が気候変動対策において、リーダーシップを発揮しようとしていること、そのための具体的な政策が着々と練られていることは、確かだと思います。このことは、中国企業のみならず、日本企業にとっても、さまざまな商機を新たに作り出すことになるでしょう。
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