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【次世代シニア】
第22回 「保険外サービス」再考

2017年08月08日 岡元真希子


 介護関連の新聞や雑誌で「保険外サービス」という言葉をよく見かけるようになった。正確には「公的介護保険外サービス」だが、介護保険給付に関わる事業者や地方自治体の職員が、そうした新聞や雑誌の読者であるため、前半を略して「保険外サービス」と表記されることが多い。

 この言葉は、関係者にとってはとても重宝だ。介護保険法に基づく指定を受けている事業者にとっては、本業である「介護保険サービス」があるので、それを出発点として「介護保険外サービス」を容易に定義することができる。「新規事業として保険外サービスを拡充して、売上比率の何%を目指そう」といった計画を見かけることもある。また、介護保険給付を利用している人にとっても、「窓磨きや庭の手入れは、介護保険給付ではできませんよ」という説明を受けているので、「保険外サービス」と言われたときにピンと来る。

 さらに介護保険を運営している自治体にとっても、法に規定される介護保険給付とそれ以外のサービスは明確だ。もちろん、自治体の業務は多岐にわたり、より正確に言えば、介護保険の担当課の所管ではあるが介護保険給付ではない、オムツ代の補助などのサービスもあれば、介護保険以外の課が所管する地域の老人会活動の支援といったサービスもある。とはいえ、「保険外」といったときに、何を指すかは比較的分かりやすい。

 しかし「保険外サービス」という言葉は介護業界の内輪の用語であって、外の業界から見ると、とても分かりにくいという危険をはらんでいる。全国の介護保険の事業所は、最も事業所数の多いサービス種別である通所介護・居宅介護支援事業所がそれぞれ約4万、訪問介護事業所が約3万、介護保険施設が全国で約1万3千である。一方で総務省統計局が調査する全国の一般的な事業所数は約560万に上る(平成28年経済センサス速報)。全体の9割以上を占める介護以外の事業者から見て、例えば「公的介護保険サービスから半径2メートルのドーナッツ状の範囲が『保険外サービス』ですよ」と言われても、何のことか分からない。

 保険外サービスについては、その内容に着目して「生活支援サービス」と呼ばれることも多かった。典型的なものとしてはお弁当の宅配や電球交換など、家事や暮らし周辺の手伝いである。また、ターゲット顧客に着目して「介護保険給付を利用している人が、保険給付以外に利用するサービス」という定義の仕方もできるだろう。しかしどちらにしても、保険外サービスの全体像を捉えたものとは言い切れない。介護保険の受給者数は400万人弱(介護保険事業状況報告月報、平成29年2月分)であり、保険外サービスを必要とする人は、要介護認定を受けていない大多数の高齢者、さらには若年でも同様のサービスを必要とする潜在顧客層と、その裾野は広い。

 「保険外サービス」に代わる新しい言葉を作り出す試みが、高齢者への手助けを行うサービス市場への、民間セクターの積極的な参入を促す第一歩になると、あらためて感じている。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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