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日本総研ニュースレター 2017年5月号

AIによる産業革命の到来 日本企業が備えるべきこと

2017年05月01日 山浦康史


AIブームと着目すべきキーワード
 機械学習、第4次産業革命、Society5.0、シンギュラリティ……など、最近は民間企業、官公庁、大学や研究機関等、各所でAI関連の話題は盛り上がりを見せている。
 第3次AIブームと呼ばれる現在の状況が生まれるきっかけとなったのは、「深層学習(ディープラーニング)」という技術が登場し、画像認識や音声認識の精度が格段に上がったことである。インターネットの普及によってウェブ上に膨大なデータが蓄積されたことや、計算資源が高速/低価格化したことが過去のAIブームとの違いである。加えて、センサー/デバイスや、通信コストの低価格化によって、ウェブ上のデータだけでなく、現実世界の膨大なデータをリアルタイムで収集できるようになったことで、これらのデータをAIによって分析して圧倒的な付加価値向上や効率化を目指す動きが活発化してきた。つまり、今後の産業変化を読み解くためには、AIの技術変化や適用領域のみに着目するのではなく、AIとビッグデータをセットで考える必要がある。

AI適用領域の拡大
 AIの利活用は既に始まっており、自動運転の判断、医療診断や治療法判断、資産運用の自動化、ロボットの会話生成といった、ユーザーへのサービス提供や満足度向上に資するAIや、設備の保守時期の判断、材料研究時の組み合わせ予測、日報からの営業機会抽出、人材採用や人事評価といった、企業活動の効率化やコスト削減に資するAIなど、活用領域も急速に広がっている。中には高度な計算を用いないAIも多数存在するが、今後、良質なデータを大量に学習させるか、高度なAIを導入することで、飛躍的に価値を高めていく可能性がある。
 また、総務省、文部科学省、経済産業省が連携する「人工知能技術戦略会議」や、総務省主導の「AIネットワーク社会推進会議」では、今後、特定産業に留まることなく様々な産業を横断してAIが連携していくことが予測されている。例えば、運転状況を基にした旅行商品のレコメンドや飲食店への誘導、商品の販売状況を基にした工場の稼働調整や物流の最適化、生活状態を基にした融資判断や保険料率の判断、道路や住民の移動状況を基にした災害対策や街づくり等がそれにあたる。一方で、AIの判断過程を人間が理解できないリスク、悪質なデータで学習することでAIが暴走するリスク、セキュリティやプライバシーのリスク等、開発や利活用時に留意すべき事項も指摘されている。

AIによる産業革命
 AI・ビッグデータによる産業構造の変化は、「インターネット革命」に匹敵するか、それ以上という指摘もある。AI・ビッグデータによって、人間の労働がより付加価値の高い作業にシフトする効果や、サービスの新たな付加価値の創出やアセット管理の高効率化などの効果が見込まれるが、それらが従来の経営努力で到達可能な範囲を越え始めると、AIやビッグデータを持たない企業は淘汰される可能性がある。また、産業横断的にサービスが提供される世界では、特定産業で先行するAIを保有する企業が、他産業で良質なデータや学習モデルを保有する企業と協力し合うことでAIを成長させ、次々と産業を席巻していくケースも考えられる。
 足元では、グーグルやアマゾンのような膨大なユーザーデータを持つ企業がより強くなり、シーメンスやGEといった企業が特定産業のデータを独占して顧客の囲い込みを行うケースも見られるが、日本企業の名前が多くは登場しない。一部の大企業やベンチャー企業がAIの開発や利活用に積極的に動いているものの、多くの日本企業は出遅れていると言わざるを得ない。

日本企業が備えるべきこと
 日本企業は、AIによる産業革命に乗り遅れないためにも、今後の産業構造の変化を見据えて準備をしておかなければならない。具体的には、自社が強みとする専門領域で学習モデルをいち早く構築して先行者優位を築くか、良質または大量のデータを蓄積して強いプレイヤーと協力可能な状況にしておくことである。
 その中で、AIを活用したビジネスをコーディネートできる人材の育成や、各種リスクや知的財産への対策、他社との連携などのノウハウを蓄積し、AIやビッグデータを武器となる経営資源として高めていくことが重要となる。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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