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【次世代交通】
地域社会の「新しい足」 自動運転移動サービスの創出 No4 自動運転による「コミュニティ・モビリティ・サービス」の実現を目指して

2017年09月12日 武藤一浩


■地域コミュニティをサポートするモビリティサービス
 前号まで(No1, No2, No3,)は、2016年10月に神戸市北区筑紫が丘で行った、低速モビリティによる近距離圏内移動サービスの実証について、利用状況や利用者からの期待の声、そしてサービス実証の主体となった地元交通事業者が実際に得られた手応えをご紹介しました。日常生活を支える移動サービスとして、特に今後、高齢化が進む数年後の有効な対策としての期待が高かったこと、カメラを備えたモビリティが走り回ることによる防犯効果や乗り合いの際に地域住民同士が顔を合わせコミュニケーションが活発化したことなど、移動以外の価値にも注目が集まりました。
 本号では、このサービスを「コミュニティ・モビリティ・サービス」と定義しそのあらましを示し、連載の最後となる次号でサービスの社会実装の早期実現に向けた道筋について言及します。

■コミュニティ・モビリティ・サービスの内容
●近距離圏内移動サービス
【低速】
 車両は低速(上限20km/h)で運行される前提です。安全面での確認はとったとしても自動運転技術は発展途上といわざるを得ず、万が一の事故の際にも大きな事故にはなりにくい低速走行での運行が特に初期には求められるからです。また、近距離圏内での移動サービスであれば、低速でも用途としては十分であるうえ、住宅地でも騒音問題等を引き起こしにくくなります。
【定ルート、デマンド】
 車両を呼び寄せ、目的地に直接向かえるデマンド運行は利便性が高く一定の需要が見込めますが、神戸でのサービス実証では車両を呼び寄せる手間のない定ルート運行の方が利用者数で上回りました。山手線のように気軽に利用でき、多くの利用が見込める定ルート運行の基盤を構築したうえで、メジャーではない地点間でも移動できるデマンド運行が補完する形で一体的に提供することが妥当と言えます。
【電動かつ小型車両】
 電動車両を用いるのは、住宅地にはガソリンスタンドがないことが多いためで、さらに、ガソリンより電気の方がコミュニティ内ではエネルギー補給の効率が良いことも理由です。また、排ガスが出ず、騒音も少ないため住民の生活環境への影響を抑えることも電動車両を活用するメリットです。小型車両が好ましいのは、コミュニティ内は高齢者や子供なども含めた歩行者や、一般車両などの移動があるため、圧迫感を与えないことへの配慮からです。
【利用者にIT機器の活用を押し付けないサービス】
 利用者がIT機器を通じて車両の現在位置を知ったり、車両を呼び寄せたりできるようにすることは非常に重要です。しかし、近距離圏内移動サービスの主要なユーザーは高齢者や専業主婦層であり、一般にIT機器への習熟度は高くありません。彼らが組織する自治会の協力を快く得るためにも、電話などによる対応も含め、利用者にIT機器以外からのアクセスができる仕組みが必要です。
【自動運転車両の活用】
 交通事業におけるコストの大半は運転手の人件費が占めています。近距離圏内移動サービスは、特にデマンド運行では運転手の人件費が加算されると採算が合いにくく、定ルート運行では「歩いても行ける」距離でも乗車してもらえるように頻繁な運行、つまり多くの運転手が求められます。そのため、運転手に頼らない自動運転車両の活用が必要となります。
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●サービスを支える形
【既存交通との連携】
 近距離圏内移動サービスは、生活圏内での移動を容易にさせるだけでなく、既存の中長距離交通サービスとの連携によって、マイカーに頼らず、どこにでも公共交通で行くことができる交通ネットワークを構築することも大きな目的としています。既存の交通サービス側から見れば、近距離圏内交通サービスは「ラストマイル自動運転サービス」として位置づけられる存在となります。
【(店舗や商店、イベントへの)集客効果】
 コミュニティ内の店舗によるタイムセールなどの情報を、定ルート運行車内広告として流すことによって途中下車での買い物を誘導できたり、利用者のIT機器に送信してそのままデマンド配車の予約ができたりすれば、利用者へのメリットになるうえ、店舗からの広告収入も得られます。
【住民利用】
 自宅から出て最初に乗車し、近所であればどこにでも気軽に行くことができる近距離圏内交通においては、利用客の多くは都度払いから定期利用に移行していくことが予想されます。実証での利用者アンケートを参考にすると、一人当たり月額3000円までの定期利用は期待できます。
【防犯効果】
 車両には内外にカメラを設置します。車内での状況把握とドライブレコーダーとしての活用が主な目的ですが、副次的な効果として「走る防犯カメラ」としての役割も担えます。自治会にとっては、地域防犯活動はコミュニティを維持するための重要な活動であり、行政の支援を受けながらこの「走る防犯カメラ」を採用することも考えられます。

 以上がコミュニティ・モビリティ・サービスの定義とそのあらましです。連載の次号では、コミュニティ・モビリティ・サービス社会実装の道筋について言及します。

『LIGARE(リガーレ) vol.33』(自動車新聞社出版)地域社会の「新しい足」自動走行移動サービスの創出(後編)P30~33を一部改変して転載


この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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