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【次世代農業】
次世代農業の“芽” 第10回 農機の革新とIoTニーズの変容

2018年07月10日 清水久美子


 先日、オランダのアムステルダムで行われたIoT TECH EXPO Europe2018という展示会・セミナーに参加した。会場では、農業分野を含めた多様なIoTプレーヤーと意見交換を行うことができた。その中で、これまで特定地域でサービスを成功させ、一定の成果を生み出しているIoTプレーヤーでも、さらなる事業拡大にあたり資金調達が難航しているという話を多数耳にした。彼らのサービスは、総じてデバイスで収集したデータをクラウド上に記録し、視覚化する、もしくは分析結果を提供するというシンプルで汎用的なものである。一方、投資家が重視するのは保有される情報の価値やその情報の展開可能性である。デバイス側が「ただデータを吸い上げる」だけの機能にとどまるものは、発展可能性が限定的であると見なされ、魅力をアピールできないようだ。

 反対に、多くの人の関心を集めているのは、エッジコンピューティングを取り込んだサービスのようだった。エッジコンピューティングは、末端側でリアルタイムに高度な分析・処理を行うことで、クラウド側に送る情報を絞りこみ、クラウド側で長期的に膨大なデータセットを伴う処理を高速かつ効率的に行うことを可能にするネットワーク構成のことである。セミナーでは、製造業やスマートシティといった分野の先行事例が盛んに取り上げられていた。

 農業分野においては、すでに製造業に倣ったIoTサービスが台頭しており、安価で手軽なデバイスを活用したサービスへの需要が顕在化している。製造業と比べひとつの経営体が負担できるコストが限定的だという特性を有する農業分野では、従来のシンプルで手軽なサービスへの需要はこの先もまだまだ堅調に見える。一方で、最近立て続けに発表されている大手農機メーカーによる自動運転技術搭載の農機の市場投入計画(注1)からは、農業分野においても近い将来、エッジコンピューティングを活用したIoTサービスの実用化が進む兆しを感じる。今日の農業にもはや不可欠の農機の革新により、農業現場ではこれまで以上に省力化・省人化対応が進むだろう。特に遠隔での圃場管理は本格的なものとなり、これまで農業者が圃場にて直接実施していた作物や土壌の状態等のモニタリングがシステムに代替されると考えている。これに伴い、今後は従来のシンプルなIoTサービスよりも、複合的な機能を持つIoTサービスの需要が高まっていくのではないだろうか。このような潮流にあって、収集されるデータの数が飛躍的に増えることに対応するエッジコンピューティングの技術が鍵を握る。2018年度は、製造業等のこれまで実績のあるプレーヤーの動向に注目すると同時に、具体的なサービスモデルの想定される活用シーンも検討していきたい。

(注1)業界売り上げ大手のクボタは、すでに2017年度に自動運転技術搭載トラクターの試験販売を開始しているが、2018年12月に今度は自動運転技術搭載コンバインを発売する予定。またヤンマーは2018年10月、井関農機は2018年中に自動運転技術搭載トラクターを発売する予定。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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