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高品質一辺倒からの脱却、シェア維持に向けた在タイ日系企業の新たな挑戦

2018年07月24日 七澤安希子


 これまでタイにある日系企業は、バンコクのアッパークラスの消費者をターゲットにビジネスを行ってきた。しかし近年では、低価格で商品を提供してきた現地企業も急速に品質向上を進めており、高品質の代名詞である“ジャパニーズブランド”だけではこれまでの消費者に訴求力を発揮できなくなっている。さらなる高品質化による差別化を目指す企業がいる一方で、最近では、成長著しい地方のアッパーミドルクラス向けに、品質を維持したまま価格を抑えた製品展開を検討し始める日系企業も出てきている。

 例えば資生堂は、バンコクのアッパー向けのブランドを維持しつつ、新たに地方のアッパーミドル向けのブランドを構築し、顧客層の拡大とブランドのすみ分けを実現させた。味の素は、独自に構築した地方の流通網を生かして消費者ニーズを把握し、品質維持やブランド維持に成功している。ハウス食品は、地方のミドル層に強いブランド力と流通網を有する現地企業と合弁を組み、商品開発を行いながらミドル層へのチャネルを獲得しビジネスを拡大させている。

 このように、高品質だけを売りにするのではなく、ミドル層向けにブランド構築や流通チャネル獲得・多様化を進めることで、新たにビジネスチャンスをつかむ企業が出てきている。日系企業のバンコクにおける競争優位の低下に伴い、今後このような動きが加速することが予想される。そうした変化で有望地域となり得るのが、タイが国を挙げて進めている東部経済回廊エリア(EECエリア)であろう。

 EECエリアはタイ政府が掲げる産業高度化政策の重要な場と位置づけられ、バンコクとEECエリアを結ぶ交通インフラの整備や企業のR&D活動が推し進められている。タイ政府は、既存の産業基盤を活かしながら産業高度化を実現していく方針であり、現在EECエリアで就業する人々は、他の地方都市と比較して相対的に高い個人所得の成長スピードを享受している。と同時に、所得の上昇に合わせて嗜好の変化も顕在化しており、今後急速にQOLへの意識が高まっていくことが予想される。また、交通インフラ新設・拡張により物流網の高度化や流通網の多様化が進み始めていることから、EECエリア内の企業は、物流コストの削減や販売ネットワークの拡大を実現しやすくなると考えられている。

 このようにEECエリアは、今後ミドルからアッパーミドルに成長する人々が急速に誕生し、そうした人々の消費者ニーズを満たす商品がいち早く求められるエリアになる。つまり、今後タイ国内で急速に増えていく、新たにアッパーミドル層の仲間入りを果たす消費者を想定し、商品の開発・製造・流通までを一貫して実現できる場になるといえよう。日系企業にとって新たなブランド構築のためのテストマーケティングエリアとしてEECエリアに注目が集まっている。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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